一つの会社に長く勤める。こういったことを過去のこととなり、今は転職を経験していない方はいないのではないでしょうか。

それは介護士さんにも言えます。キャリアップや待遇の改善を求めて転職することは当たり前となっています。

そんな当たり前となった転職。このコラムでは介護士さんが初めて転職をする際に気を付けてほしい内容をまとめています。

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総務省によると、2016年の転職者数は、306万人(前年比3%増)となり、これは、2009年以来の高水準(2009年の転職者は320万人)。

過去最高を記録した転職者数は346万人で、この記録に近づいています。

その背景には、

  • 終身雇用が崩壊したこと
  • よりよい職場環境を優先するようになったこと

があります。

年代別には、

  • 15~44歳が65%(199万人)
  • 45歳以上が35%(107万人)

を占めます。

45歳以上の転職者は、3年で17万人増えました。

これは、深刻な人手不足に苦しむ企業がスキル(技術)を持った即戦力を求めているから

そのため、45歳以上の転職者の中には、65歳以上の方も少なからずいます。

こういった現状を見ると、

即戦力となるスキルがあれば年齢にかかわらず転職先はある

ということがわかります。

荒れる介護の現場!?

厚生労働省によると、介護施設(福祉施設)で、介護職員による高齢者への虐待は、2015年度に408件(前年度比108件増加)あり過去最多を更新しました。

これは、9年連続で過去最多を更新しています。 

介護職員でつくる労働組合では虐待は、

  • 深刻な人手不足による職員のストレスが虐待の大きな要因
  • 人手不足を解消しないと虐待は減らない

としており、介護の現場は年々厳しい状況になっていることがわかります。

そういった現状の中、転職を検討する介護士さんが増えてきています。

転職はやみくもに行うとより厳しい状況に自分を追い込むこともあり、最低限ポイントを知っておくことが必要となります。

転職する際に注意すべきポイント!

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介護施設の担い手である介護職員の皆さんは、

  • 低賃金など劣悪な労働条件で働いているケースが多く
  • 介護職員の離職率も高い(介護職員の離職率は16.7%,2016年)

こういったことから、介護士(介護福祉士など)の資格を持ちながら他の業種に転職する介護職員も多いのが現状です。

そこで、同業種(介護施設や病院)に転職する場合も含めて、介護士さんが転職する際に注意すべきポイントを整理しておきます。

お給料が下がらない!

転職した場合、現在の賃金が下がらないことがポイントです。

介護施設で働く介護職員(施設長をのぞく)の平均賃金は22万4848円(2016年9月時点、月給)。

となっていますが、2017年4月から介護職員の賃金が月額で平均1万円引き上げられています。

これを考え合わせると、介護職員の平均賃金は、約23万円(月給)です。

賃金が引き上げられている今、転職の際は今のお給料と同額、またはアップする場所への転職を検討しましょう。

転職によってお給料が下がると、今の生活レベルを落とす必要があります。

ですが、いったん確立した生活レベルを落とすのは難しいのが現実。

そういったことも知ったうえでお給料が下がるような求人先には転職しないよう気を付けましょう。

厚生年金や健康保険に加入できるか?

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転職する際には、厚生年金や健康保険に加入できる企業を選びましょう。

残念のことに実際、社会保険に加入しないで、保険料を支払わない悪質な企業もあるようです。

こうした場合、労働者(従業員)は、国民年金や国民健康保険に加入することになり保険料が全額自己負担になってしまいます(ちなみに厚生年金や健康保険の場合、保険料は事業所と職員の折半です)

会社や従業員5人以上の個人事業主(個人企業)は、厚生年金や健康保険に加入する義務があります。

厚生年金や健康保険の保険料は事業所と職員の折半して負担しています。

つまり、企業(使用者)が保険料の半分を負担しています。

ところが、厚生年金や健康保険の保険料の負担を逃れるため、わざと厚生年金や健康保険へ加入していない違法な企業があります。

こうした、厚生年金や健康保険への未加入の疑いのある違法な企業は79万社あるとされています。

この中には、保険料を支払う金銭的な余裕があるにもかかわらず、払わないという悪質な企業もあります。

厚生年金未加入の現状は?

厚労省の推計では、本来は厚生年金に加入できるのに、国民年金(基礎年金)にしか加入していない従業員が約200万人(全体の12.6%)いるとされています(2014年3月末時点)。

つまり、200万人の労働者は資格があるのに厚生年金に加入せず国民年金のままになっています。

年代別では、

  • 20代が71万人
  • 30代が52万人
  • 40代が44万人
  • 50代が35万人

となっていて、若い世代ほど、資格があるのに厚生年金に未加入の人が多いのです。

厚生年金は、国民年金に比べより手厚い給付が受けられます。

つまり、国民年金だけだと厚生年金よりも将来もらえる年金額が少ないのです。

医療保険も同様に、国民健康保険(本来、自営業者などが加入)は保険料が全額自己負担なので、その分だけ保険料が高くなります。

したがって、転職する際には、

転職先が厚生年金や健康保険に加入しているかどうか確認

ことが大切です。

労働組合に加入できるか?

転職する際には、労働組合に加入できるかをチェックしましょう。

ただし、労働組合はある程度大きな規模の事業所でないとありませんのであればラッキーくらいでチェックしておけばいいでしょう

ここからはちょっと難しい話になるので興味のない方は次の項目へ!

日本国憲法は、「勤労者(労働者)の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」(28条)とさだめており、「労働組合(労組)」の存在を認めています。

つまり、労使関係において立場の弱い労働者が労働組合を結成・加入する権利(団結権)、その組合を通じて企業(経営者)と交渉し、労働条件の改善を要求する権利(団体交渉権)、交渉で要求が受け入れられない場合、ストライキなどの手段にうったえる権利(団体行動権)は、いずれも憲法によって保障されています。

これらは、労働三権として中学校の教科書にも掲載されている基本的人権です。

ですが、経営者の中には労働組合は邪魔な存在と思っている人も・・・。

そんな経営者の中には、ときにあからさまな方法を使って、ときに陰険な方法を使って「労組つぶし」をしてきます。

それなら、労働者個人が労働条件の改善(賃上げや長時間労働の是正など)をもとめて経営者に直接交渉すればいいと思うかもしれません。

ですが経営者は、労働者個人の直接交渉を拒否しても違法ではないのです。

ところが、労働組合が賃上げなどをもとめて交渉をしてきた場合、経営者がこれを拒否することは、不当労働行為となり違法となります。

そこで、経営側は、さまざまな手をつかって労組つぶしを仕掛けてくる可能性も・・・。

つまり、憲法で保障されている労働組合の存在を敵視して労働組合の活動を妨害し、うまくゆけば労組をつぶしてしまおうと考える経営者(使用者)はすくなくありません。

従業員(労働者)を採用するにあたって労働組合に入らない(またはつくらない)と契約(約束)させる「黄犬(おうけん)契約」は、労働組合法第7条で明確に禁止されていますが、そのような黄犬契約すら行っている違法な企業も存在しています。

具体例では、動画共有サイトのYouTube上でも有名になった「労組つぶし」の事例です。

引越会社に勤務していた男性は、営業車で事故を起こし会社から弁償を求められたことから労働組合に加入しました。

そこで、経営側に団体交渉を申し入れたところ、営業職から書類をシュレッダーにかけるだけの単純作業をするシュレッダー係に異動になりました。

会社の表向きの理由は、「男性の遅刻」です。

つまり、労働組合に加入して団体交渉をしようとしたら、正当な理由なく配置転換になったということです。

そこで、男性は配置転換の無効を求め東京地裁に提訴。

これを受けて会社は、彼を懲戒解雇。ところが、会社はその後、解雇を取り消し。訴訟で両者の間で和解が成立し、男性は営業職に復帰しました。

会社の真の狙いは「労組つぶし」だったのです。

このように、労働組合をつくらせない、労働組合に加入させないような企業に転職するのは避けるべきです。

転職先がブラック企業でないか?

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転職する際にはブラックでない企業を選びましょう。

ブラック企業とは、労働者(従業員)を過酷な労働条件で働かせる企業のことです。

つまり、ブラック企業とは、労働者がその職場で働くとき、その

働き方のルールを順守していない会社

ということです。

私たちが会社で働くとき、まず、どんな条件で働くか(労働条件)を会社と契約しますが、この契約は会社にとって都合のいい条件で結ぶことはできません。

会社と労働者の間で、長時間労働や低賃金を約束させないように、労働基準法などルール(法律)が決まっています。

この働き方のルールを守らない会社がブラック企業なのです。

日本の会社は、終身雇用・年功序列によって、定年まで働いて年数がたてば給料が上がっていたので、これと引き換えに、繁忙期(仕事が忙しい時)には長時間労働をする慣習がありました。

こうして、無理な仕事をたのまれても拒否できないムードが日本の会社には現在もなお残っています。

私生活の充実を重視する労働者

ですが、連合のシンクタンクが、「仕事と私生活のどちらを重視するか」を質問したところ、

63.5%の労働者が「私生活を重視したい」

と回答しています(2016年4月、20~64歳の労働者2,000人にアンケート)。

また、今後の仕事時間について、46.8%の労働者は「労働時間を減らしたい」と回答しています。

労働者の大部分は、「本当はもっと私生活を充実させたいのに働かざるを得ない」と考えているのです。

こうして、仕事よりも私生活を重視する考え方が広がっていて、ブラックな働き方を見直す会社も増えています。

それでは、ブラック企業はどう見分ければいいのでしょうか。

ブラック企業に共通する特徴があるので整理します。

残業代ゼロの会社はブラック企業!?

残業(時間外労働)をしてもその分の賃金を支払わない「サービス残業」が多い会社はブラック企業です。

労働基準法の37条では、残業代は割増賃金とさだめられていて、会社は残業した社員(従業員)に対して、通常より高いお金を払う必要があります。

サービス残業の狙いはブラック企業の経費削減。

ブラック企業側は労働者(従業員)に対して、残業しないとできないような仕事量を与えておいて、労働者に「残業していません」と申告させて経費をおさえるのです。

このように、決まった時間よりも長く働いてもお金をもらえない場合はブラック企業の可能性大です。

離職率の高い会社はブラック企業!?

会社をやめる人の割合をあらわす「離職率」がとても高い場合はブラック企業の可能性が高いと言えます。

厚生労働省によると、大学を卒業した者で入社3年以内の離職率は約30%で推移しています(2010年~2012年卒業は実績値、2013年~2014年卒業は推計)。

ですが、例えば教育や飲食業などでは約50%の離職率のケースもあります。

このように、就職した後すぐに会社をやめる人が非常に多い、

離職率が30%を超える場合は、ブラック企業の可能性大です。

労働条件や職場環境がよければ、30%を超える離職率はありえないからです。

ちなみに常勤の介護職員の離職率は16.8%ですから、30%をこえる離職率がいかに高いか分かるとおもいます。

異常な長時間労働をさせる会社はブラック企業!?

  • 寝る時間もない
  • 休日もとれない

ほど働かせる会社はブラック企業です。

残業時間80時間(月間)が過労死ラインとされています。

これを超えるような仕事をあたえる会社はブラックと言えるでしょう。

また、労働安全衛生法では、残業時間が80時間(月間)をこえる労働者について、事業者はなんらかの措置をとるよう努める義務があります。

さらに、残業時間が100時間(月間)をこえた労働者については、事業者は、医師による面接指導をおこなう義務があります。

このように長時間労働は命にかかわる問題なので、法的にもきちんと規制されています。

パワハラがひどい会社はブラック企業!?

職場の地位を利用して、みんなの前で怒鳴(どな)るなど、従業員に苦痛をあたえる行動をたくさんする職場はブラック企業によくあります。

パワハラは、上司による部下に対するいじめで、学校・介護・医療・IT・飲食・公務員などあらゆる業界で見られます。

その内容は、

  • 無視する
  • 仲間はずれにする
  • やめろと脅(おど)す
  • イスを投げつける
  • 殴る
  • 仕事の妨害をする
  • 遂行不可能な仕事を強制する
  • 能力とかけ離れた程度の低い単純作業を命令する

などさまざまです。

正社員、パート、派遣社員など労働形態にかかわらずパワハラのターゲット(標的)になります。

大手アパレル会社では、「命の危険を感じるほどの暴力」が横行した結果、裁判で1,000万円の損害賠償が命じられています。

パワハラも長時間労働と同様に命にかかわる問題なのです。

やめさせてくれない会社はブラック企業!

「この会社をやめたい」と言って辞表を提出しようとしても、「その話はあとで」とかわされ、やめさせてくれない場合はブラック企業の可能性があります。

「やめるんだったら損害賠償するからな」と脅迫まがいの引き留めもあります。

ですが、実際に過労で従業員が倒れると、簡単にやめさせてもらえます。

元気である間はとことん働かせ、使い物にならなくなるとクビにするのが狙いなのです。

このようなブラック企業には転職してないでください。

ちなみに、法律では従業員はどんな理由でも退職できるようになっているので(民法627条)、従業員が、急に退職した程度で企業が損害賠償を請求できることはまずありません。

よって、退職により法的にペナルティ(罰)を課されることはまずありません。

自分の生活スタイルに合った働き方を選べる!

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転職するなら、多様(柔軟)な働き方を認めている企業にすべきです。

たとえば、

  • 週休3日制
  • 限定正社員

です。

週休3日制は、運輸、小売り、IT業界などで導入されています。

限定正社員とは、正社員でありながら、職務や勤務地を限定したり、勤務時間を短くしたりした社員のことです。

これは、パートやアルバイトの勤務形態のまま正社員になることです。

どうして、企業は多様な働き方(従業員のライフスタイルにあわせた職場環境)を導入するのか。

答えは人手不足だからです。

2017年7月の正社員の有効求人倍率は、1.01倍で、2カ月連続で1倍を超えました。

有効求人倍率が1をこえるとは、ハローワークにおいて求人数が求職者数を上回ること、すなわち人手不足を意味します。

社員の有効求人倍率が1倍をこえたのは、2004年の調査開始以来はじめてで、少子高齢化により求職者の数がどんどん減っています。

企業の人手不足は深刻になっています。

こうして、経営側は働き手の確保のため労働者のニーズに応(こた)えざるをえないのです。

仕事よりも私生活を重視する労働者が多い中で、企業側が多様な働き方を整備しないと働き手を確保できせん。

具体的には、

  • 育児や(親の)介護と仕事とを両立させたり
  • 転勤がなかったり
  • 残業が少なかったり
  • 項目

休日が多い働き方へのニーズが高まっているのです。

兼業・副業を容認している!

社員(従業員)が兼業・副業するのを認めているかどうかも転職する際のポイントです。

現在、本業に加えて社会的活動など副業に取り組む新しい生き方が提唱されていて、政府も「働き方改革」の一環として本業以外に仕事をかけ持ちする兼業・副業の推進をしています。

現在、従業員が副業・兼業するのを容認している企業はまだ少なく、23%です(2017年1月時点、ランダム抽出した1,147社が対象)。

企業側のおもわくとしては、人手不足が今後ますます深刻化する中、正社員としての採用が難しくても副業・兼業として採用するなら働き手を獲得できることです。

こうして、日本は、労働者を複数の会社がシェア(共有)する時代になろうとしているのです。

あまり有名な指標ではありませんが、「充足率」という経済指標があります。

これは、企業の求人数に対する実際に就職した人の数の割合を示すものですが、2017年7月の充足率は15.0%。つまり、企業側が100人雇おうとしたが、採用できた労働者が15人ということです。

これが、兼業・副業でもいいから、働き手が欲しい企業の現状なのです。

転職する際には、こうした企業の窮状を知った上で、有利な労働条件を勝ち取ってください。

ペットを飼っている社員のための労務管理の充実もあればなお良し!

ペット(犬やネコ)を飼っている介護士さんが転職する場合、ペットフレンドーリー(ペットに配慮した)な企業を選ぶとより良いでしょう。

犬と猫の飼育頭数は1972万頭(2016年推計)と15歳未満の子どもの数1571万人を上回っています。

犬や猫を飼う社員は全体の4割にのぼります。

また、ペットを家族の一員と考えて屋内で飼うライフスタイルが定着しています。

こうして、「人間とペットとの共生」という考え方が、個人だけでなく企業にも広がり始めています(欧米ではすでに普及)。

つまり、ペットを社員の子供と考えて、ペットを飼う社員向けの労務管理を整備する企業が増えています。

具体的には、

  • ペットが死んだ時やペットの誕生日に有休(有給休暇)の取得
  • ペットの病気や通院で会社を休める
  • ペットとの同伴出勤
  • ネコのエサ代を支給する「ネコ手当」

などがあります。

こうしたペットに配慮した福利厚生制度は、企業が「ペットは家族」と考える社員の気持ちに寄り添うことで、働き手を獲得するのがねらいです。

まだまだ、導入されている事業所はほとんどないかもしれませんがこういったペットに配慮した企業は働く人にも配慮をしてくれます。

感染症対策が万全な事業所を選ぶ!

介護士さんが、介護施設(福祉施設)や病院に転職する場合、転職先における感染症対策が万全かどうかもポイントです。

施設や病院の高齢者が感染者になった場合、介護者本人にも感染するおそれがあります。

高温多湿の夏場は、細菌やウィルスが繁殖(はんしょく)しやすく、各地で感染症が頻発(ひんぱつ)します。

とくに、体の弱い高齢者を預(あず)かる介護施設や病院は、特別に警戒をしなけばなりません。

具体的には、

  • お年寄りに体調不良が確認された場合、速やか家族に連絡し、医師に診察してもらう
  • お年寄り全員について毎日体温を測り、十分に加熱した料理を提供する
  • トイレの手すりやドアのノブ(取っ手)を毎日入念に拭く
  • お年寄りが嘔吐した際の「処理マニュアル」を順守する

転職の際には、こうした感染症対策が万全の介護施設や病院を選んでください。

完璧を求めないようにすることも大切!

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これまで初めての転職の際にチェックしたいポイントをまとめました。

現実的にすべてのポイントを満たしている事業所や企業は残念ながらありません。

自分の中で「これだけはゆずれない!」というポイントを大切にしたうえで、最低限のポイントを抑えた転職先を見つけるのが現実的と言えます。

転職の際は、

  • あせらず
  • 早めに活動を始める

よう心がけましょう!